うつ病患者に筋トレは必要?当時と今の考え方の違い

自宅のジムでバーベルの前に座り、落ち込んだ表情を見せる30代の日本人男性。 うつ病闘病記
筋トレが心の支えだった——しかし、それすらもできなくなった日。

回復を信じた矢先のアクシデント

家での筋トレにもすっかり慣れ、徐々に扱うウェイトも重くなっていきました。
それと同時に、「まだ自分はやれる」「体を動かせる」という達成感が、うつで沈んだ気持ちを少しずつ押し上げてくれているのを実感していました。

筋トレをする前は、一日中ソファでぼんやりしていることが多く、気分が沈みがちでした。
しかし、筋トレを始めてからは「今日はスクワットを10回やろう」「昨日より少し重いダンベルを使ってみよう」と、少しずつ目標を立てることができるようになり、それが毎日の小さな達成感につながっていました。

ところが、その頃の私は、筋トレができることの嬉しさに気を取られ、うつによる判断力の低下や薬の影響でぼんやりしていることに気がついていませんでした。

ぎっくり腰で突然の挫折

ある日、いつもより少し重くしたバーベルを使いスクワットを始めた瞬間、バランスを崩し、腰に激しい痛みが走りました。
それは、これまでに経験したことのないほどのひどいぎっくり腰でした。

数日間はベッドから起き上がることすらできず、トイレに行くのも妻の手を借りるほどの状態でした。
夜も、少し寝返りを打つだけで腰に激痛が走り、まともに眠ることができませんでした。

「このままではいけない。整形外科に行くべきだろうか?」
そう考えはしたものの、仕事を休むようになってから、私はまだ知らない場所に行くことへの恐怖心を拭いきれていませんでした。

結局、動けるようになってからも病院には行かず、妻に買ってきてもらった湿布で痛みを和らげながら、どうにかやり過ごしました。

医師からのまさかの言葉

数日後、精神科の診察日を迎えました。
先生に、しばらく前から筋トレを始めていたこと、そして筋トレ中にぎっくり腰を起こしてしまったことを報告しました。

すると、先生はこう言いました。

「うつの間は体をしっかりと休めることが大切だよ。筋トレはやめて、安静にしていた方がいいよ。」

私はその言葉を聞いた瞬間、まるで自分の支えを奪われたような気持ちになりました。
筋トレをすることで気持ちが軽くなり、前向きになれていたのに、それを否定されたような感覚でした。

結局、それ以来、私は筋トレをすることをやめてしまいました。
すると、気持ちの落ち込みが再び強くなり、またソファに座ったままぼんやりする時間が増えていきました。

筋トレはうつ病の回復に有効だった?

現在では、筋トレ(レジスタンストレーニング)や有酸素運動が、うつ病の症状を軽減することが多くの研究で示されています。

筋トレのメリット

  • 脳内ホルモン(セロトニン・ドーパミン)の分泌促進 → 気分の安定
  • ストレスホルモン(コルチゾール)の減少 → うつ症状の緩和
  • 自尊心・自己効力感の向上 → できることが増えると自信につながる
  • 睡眠の質の向上 → 夜の眠りが深くなる
  • 生活リズムの安定 → 一日の流れを作る

ただし、運動を「義務」にすると逆にストレスになりやすいため、「楽しめる範囲で続ける」 ことが大切だと言われています。

一方で、私がうつになった当時(20年以上前)は、「うつ病の人は筋トレをしないほうがいい」と言われていました。

🚫 当時の考え方

  • 過度な運動はストレスになる → 体力的な負担が大きいと逆効果
  • 交感神経の過剰な刺激を避けるべき → うつの人はリラックスを優先すべき
  • うつ病に対する運動療法のエビデンスが不十分だった
  • 「安静第一」という考えが主流だった

💡 現在の考え方

  • 適度な筋トレがうつ病に有効」 という研究が増えている
  • 「運動不足」がうつを悪化させるリスクになる と考えられるようになった
  • 軽い筋トレなら気分の安定に役立つ

私は当時の指導を受けて筋トレをやめてしまいましたが、今振り返ると、「体を動かすことで気持ちが軽くなる」 という自分の実感は間違っていなかったのだと思います。

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