「股関節が浅い」だけでは説明できない痛み
股関節のレントゲンを撮った結果、診断は「股関節が浅い」、つまり寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)でした。
これは、骨盤のくぼみ(寛骨臼)が浅いために、大腿骨頭(太ももの骨の先端)がしっかりとはまり込まず、不安定になりやすい状態です。
しかし、主治医はこう言いました。
「それだけでは、転倒の拍子にここまで強い痛みが出るのは説明がつかないね。」
構造上の問題だけで、今回のような急激な痛みが起こるとは考えにくい。そう判断され、別の専門医による診察を受けることになりました。
詳しい診察とMRI検査の結果
診察台で横になり、医師に足をいろいろな方向に動かされながら、どの動きで痛みが出るのかを丁寧に確認されました。
その上で医師はこう提案しました。
「念のため、MRIも撮ってみましょう。」
そしてMRI検査の結果、下された診断名は──「股関節唇損傷(こかんせつしんそんしょう)」。
私はこの病名をそのとき初めて聞きました。
股関節唇損傷とは?図解なしでもわかる基礎知識
股関節唇ってなに?
股関節は、「大腿骨頭」と「寛骨臼」がはまり合うボールジョイントのような構造になっています。
この寛骨臼の縁にある「股関節唇」は、軟骨のようなクッション材で、次のような働きを担っています:
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関節の安定性を保つ
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衝撃を吸収する
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関節液をとどめて滑らかな動きを助ける
この股関節唇が裂けたり、すり減ったりした状態が「股関節唇損傷」です。
主な症状
股関節唇が損傷すると、次のような症状が現れます:
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鼠径部(足の付け根)の痛み
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足を動かすと「引っかかる」「カクッとする」ような感覚
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長時間の歩行や座位での痛みの増強
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足を開く・ひねるなどの可動域の制限
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スポーツ中や片足立ちでの不安定感
初期は「筋肉痛かな?」と軽く見られがちですが、放置すると徐々に悪化していく傾向があります。
原因は?どんな人に起こりやすい?
✅ スポーツによる負荷
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サッカー、バスケットボール、バレエなど
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蹴る・ひねる・急な方向転換の繰り返しによる負荷が原因に
✅ 股関節の構造異常(FAIや寛骨臼形成不全)
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FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント):骨の形がぶつかりやすく、関節唇を傷つけやすい
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寛骨臼形成不全:関節が不安定になり、股関節唇に常に過剰な負荷がかかる
※今回の私のケースは、この「股関節が浅い」ことが大きく関与していたようです。
診断にはMRIが必須
レントゲンでは骨の構造しか分からず、関節唇の損傷までは映りません。
そのため、股関節唇損傷が疑われる場合には、
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MRI(特に造影剤を使ったMRA)が必要です。
これにより、股関節唇の裂け目や周囲の炎症が詳細に確認できます。
治療法:まずは保存療法、改善しなければ手術も
症状の程度に応じて、以下のような治療が選択されます。
🧘♀️ 保存療法(軽症の場合)
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鎮痛薬(NSAIDs)の服用
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股関節周囲の筋力トレーニング(理学療法)
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動作制限や生活の見直し
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ヒアルロン酸やステロイドの関節内注射
🛠 手術療法(保存療法で改善が見られない場合)
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関節鏡を使った関節唇の縫合や部分切除
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骨の形を削る処置(FAIへの対応)
※術後は1週間前後の入院と、数か月のリハビリが必要です。
放置するとどうなる?
放置してしまうと、軟骨のすり減りが進行し、最終的に変形性股関節症へと悪化する可能性があります。
その結果、歩行困難や人工関節置換手術が必要になるケースも。
「そのうち良くなるだろう」と我慢せず、早期発見・早期治療が大切です。
まとめ|違和感を放置せず、早めの受診を
股関節唇損傷は、軽い違和感から始まり、気づかぬうちに悪化する疾患です。
私自身も、「転んだせいで腰が痛いのだろう」と思っていたら、実は股関節に根本的な問題があったというケースでした。
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「胡坐をかくと股関節が痛い」
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「足の付け根に違和感がある」
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「足を開いたときに引っかかる感じがする」
こんな症状がある方は、ぜひ一度、整形外科での診察とMRI検査をおすすめします。
自分の未来の股関節を守るために、早めの受診が何より大切です。
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