退職後の絶望と長引くPTSD――働くことが怖くなった日々

暗い部屋の片隅で膝を抱えて座る30代の日本人男性。無気力な表情でうつむき、深い悩みを抱えている様子が伝わる。わずかに差し込む光が孤独感を際立たせる。 うつ病闘病記
出口の見えない不安と無気力——心が沈み込む日々

仕事を失い、深まる絶望

あまりにもひどい課長の対応により、退職せざるを得ない状況に追い込まれました。
退職した直後の数日は、課長に対する怒りが収まらず、感情が高ぶっていました。しかし、それと同時に仕事から解放されたことで「もう、あの職場に行かなくて済むんだ」という安堵の気持ちもありました。

しかし、気持ちが落ち着いてくるにつれ、次第に現実が押し寄せてきました。

  • 仕事を失い、無職となったこと
  • 当然ながら収入がなくなり、生活に困ること
  • 今後、どうやって生きていけばいいのか、全く見えない将来

この不安が一気に襲いかかり、うつの症状が急激に悪化しました。

眠剤を飲んでも夜は眠れず、食事ものどを通らない。気持ちは終始落ち込んだまま。
体は鉛のように重く、ベッドから起き上がるのも大変になりました。

洗面も億劫になり、無精ひげが伸び放題。
何とか起き上がっても、何も手につかず、一日中テレビを眺めるだけ。
しかし、そのテレビの内容すら頭に入ってきません。

お風呂に入るのも重労働のように感じ、シャワーを浴びるのがやっとでした。

そんな私の姿を見て、妻は「目がうつろになっていて、何も目に映っていないようだった」と後に語っていました。
この状態は、最初にうつ病と診断されたとき以来、最もひどい状態だったそうです。


PTSDの発症――県庁の近くを通るだけで息が詰まる

精神科のクリニックには、これまで2週間に一度通院していました。
しかし、この時期は、クリニックに行くのすらつらくなっていました。

さらに、問題だったのはクリニックへ向かう途中のルートでした。

これまで通っていた道は、県庁のすぐそばを通る道だったのです。
しかし、この頃の私は、県庁の近くを通るだけで冷や汗が止まらず、息苦しくなりました。

胸がギュッと締めつけられ、動悸が激しくなる――。

おそらくPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症していたのだと思います。

とうとう一人でクリニックに行くこともできなくなり、妻に付き添ってもらうようになりました。
妻は私の状態を見て、「県庁のそばを通らずに行けるルートを探そう」と言い、少し遠回りの道を選んでクリニックまで連れて行ってくれました。

このPTSDの症状は非常に長引き、それから十数年経った今でも、県庁のそばには行けません。

以前のような強い発作はなくなりましたが、それでも県庁があるエリアに近づくと、胸の奥がズキズキと痛むような感覚に襲われます。

「鬼の形相で解雇を言い渡そうとしていた課長の顔」
これが、今でも頭から離れません。

しかし、今はもうその顔に怯えることはなくなりました。
代わりに、「あの爺ももう耄碌(もうろく)しているだろうし、早く死ねばいいのに」と思う程度にはなりました。


社会との断絶――知らない人が怖い

どれほどの期間、このような生活を送っていたのか、はっきりとは覚えていません。
しかし、この時期の私は、本当にひどい状態でした。

家事もできず、子供の面倒を見ることもできませんでした。

頭では「次の職場を探して働かなければ」「このままだと家族を路頭に迷わせることになる」と理解していました。

しかし、どうしても 心と体が言うことを聞いてくれない のです。

妻は、

「いいよ、しばらく休んでいて。あんなひどいこと言われたんだもん。傷つかないほうがおかしいよ。」

と、何度も言ってくれました。

頭では「ありがたい」と思うのですが、心からその言葉を受け入れて「休もう」とは思えませんでした。

たぶん、この頃の私は 頭の中全体が霧に包まれていた のだと思います。

  • 何を考えても、ぼんやりとしている
  • すべてのものに靄(もや)がかかっているような感覚
  • それでいて、突然の音や知らない人に対する恐怖感だけは異常に強い

そんなある日、妻の叔母が季節の果物を持って家に来てくれました。

「ピンポーン!」

ドアのチャイムが鳴った瞬間、私は全身がビクッとなりました。

妻がとっさに、

「寝室に隠れて!」

と、小声で言いました。

その言葉に反応するように、私は まるで本能的に すぐさま寝室に駆け込みました。

その後、妻が果物を受け取って部屋に戻ってくると、笑いながら言いました。

「なんかさ、人が来たら隠れるって、悪いことしてるみたいだね。別に隠れる必要なんてないんだけどね。でも、他人と会うの嫌だもんね。」

その言葉を聞いて、私は

「そうだよな。別に悪いことをしているわけじゃないんだよな。でも……恥ずかしいことをしているのかもしれない。」

と、ぼんやり思いました。

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