焦点の合わない目、滴る手汗、激ヤセ…周囲が気づいた異変、そして医者へ向かう決意

精神科クリニックのドアの前で立ちすくむ20代の日本人男性。戸惑いと不安を感じながら、診察を受けるかどうか迷っている様子 うつ病闘病記
精神科の扉の前で立ち止まる——この一歩を踏み出すべきか、まだ迷っている

手汗、不眠、激やせ…——周囲が気づいた異変、そしてついに医者へ向かう決意

仕事のプレッシャーが増し、ついに期限までに仕事を仕上げることができなくなりました。
キーボードに滴るほどの手汗が出て、食事も取れず、体重はみるみるうちに減っていきました。

異変は日常生活にも広がっていました。

家ではテレビをつけても内容が頭に入らず、ストーリーを追えなくなってしまいました。
そのため、連続ドラマのような番組は見ることができませんでした。
またお笑い番組を見ても何が楽しいのかわからず笑えなくなりました。

もともとお風呂が好きだった私ですが、シャワーを浴びることすら億劫に感じるようになりました。
うまく会話ができず、呂律が回らなくなることも増えていました。

家事はなんとかこなしていましたが、始めるまでに時間がかかります。
「やらなければ」と思っても、腰を上げるまでにものすごく時間がかかり、動き出すまでがとても億劫でした。

また音が怖く、音を聞くだけで疲れるようになりました。

自動車の音、洗濯機や掃除機などの日常的な生活音。
普通なら気にならないはずの音が耳に刺さるように感じ、聞いているだけでぐったりと疲れてしまいました。

職場でも、異変は顕著になっていました。

何から手をつければいいのかわからず、少し作業をするだけで異様に疲れてしまい、すぐに手が止まってしまいます。

周囲の音がすべて雑音にしか聞こえず、話しかけられても相手の声が頭に入ってきません。
電話が鳴る音を聞くのが怖く、部屋のドアが閉まる音に驚いて体がビクッと反応してしまうようになりました。

そんな私を見て、周囲も異変に気づき始めました。

妻は「最近の様子がひどすぎる」と心配し、共済の職員など職場の外部の人からも、
「大丈夫?」と声をかけられることが増えました。

「大丈夫って何のことだろう?仕事のことかな?」と心で思いながら、とりあえず、
「別に問題ないですよ。大丈夫です。」と答えていました。

当時の私は、自分では気づかないうちに、すでに「病人の顔」をしていたのかもしれません。

(妻によると、「目がうつろで、焦点が合っていないような顔をしていた」とのことでした。)

そのような日々が続き、ついに

このままでは、どうにかなってしまうかもしれない

そう思い、医者にかかる決意をしました。


最初の診察で言われた「精神科へ」

まずは、かかりつけの内科へ。
しかし、先生から言われたのは意外な言葉でした。

「様子がおかしい。専門の先生に診てもらったほうがいい。」

「専門の先生?」と聞くと、「精神科の先生だね」 と返ってきました。
「精神科」 という言葉に、私は一瞬戸惑いました。

「精神科?そんな…精神科に行くような病気なのか?」

当時の私は、精神科と聞くと、「自分とは関係のない場所」 という先入観を持っていました。
ショックを受けつつも、紹介された以上、行ったほうがいいのだろうと考え、近所の精神科クリニックを訪れることにしました。


最初の精神科での診察—期待外れの対応

クリニックで、私は「手汗がひどい」「夜眠れない」「体の疲れが取れない」 という悩みを医師に伝えました。

すると、医師は厚い専門書を取り出し、こう説明しました。

「手汗が出るのは、交感神経が働いているからですね。」
「他の症状も、交感神経が高ぶっているために起こっています。」

…それだけでした。

「交感神経が高ぶっているから?…それは分かった。でも、どうすればいいんだ?」

生活の改善点を指導されることもなく、具体的なアドバイスもなし。
結局、薬も処方されず、ただ説明を聞いただけで診察は終わりました。

帰り道、私は何とも言えない気持ちになりました。

「何をしに行ったんだろう…?」

期待していた「改善策」もなく、ただ恥ずかしい思いをしただけでした。
当然、私の不眠や疲労、絶え間ない緊張感が解消されることはなく、再び同じ生活を続けることになりました。


再び内科へ—本当に信頼できる医師と出会う

しかし、状況はどんどん悪化していきました。
どれだけ休んでも体は重く、夜もほとんど眠れない。
「このままではいけない」と思い、再びかかりつけの内科を訪れました。

前回の精神科での診察結果を伝えると、先生は驚いた様子で言いました。

「あの先生がそんな対応をするなんて…」

そして、こう続けました。

「少し遠いけど、信頼できる先生を紹介するから、そちらに行ってみてくれ。」

同じ精神科とはいえ、何が違うのか?
疑問を感じながらも、私は言われたクリニックへ向かいました。


本当に理解してくれる医師との出会い

新しいクリニックで、私は初診表に今の状態を記入し、診察を受けました。

すると、先生は「人間関係など現在の仕事の環境」「勤務内容」「自宅での生活」などを事細かに尋ねてきました。
(前回の精神科では、そんなことは一切聞かれませんでした。)

そして、先生は私の話を聞いた後、こう言いました。

「心が疲れ切っちゃっているね。体も、心に引きずられて疲れてしまっているよ。つらかったでしょ。」

「少し、心と体を休めようか。」
「まずは心を休めるために、仕事をしばらく休むことにしよう。」

その言葉を聞いたとき、初めて「理解してくれる人がいる」と感じました。

さらに、先生は続けました。

「薬も飲んだほうがいいね。体重もかなり減っちゃっているし、そちらも改善しないと。」
「心が軽くなる薬を出すよ。夜眠れないのも、薬を飲めば眠れるようになるから。」
「焦らずに、一緒にのんびりした生活を送れるようにしていこう。」

この時点では、「うつ病」という言葉は出ませんでした。
でも、先生が私の状況を理解し、必要なことを具体的に教えてくれた。

「それだけで、少しだけ心が軽くなった気がしました。」

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