父の死後、母との生活が始まる
父が亡くなり、四十九日の法要も無事終わり、母との敷地内別居の生活が始まりました。(と言っても歩いて2,3歩の距離ですが)
母も落ち着きを取り戻したようで、静かな日々を過ごしていました。
私も幸いなことに、軽躁状態からの反動もほとんどなく、大きな気分の落ち込みもありませんでした。
もともと父は頑固で、家庭の中でもどこか距離を置いているような人でした。そのため、母にとっては寂しさと同時に、少し気が楽になった部分もあったのかもしれません。
それでも母は寂しさを感じることがあったようで、頻繁に外食に誘ってくるようになりました。
特に子どもと一緒に食事をすることをとても喜んでいました。
「○○(子どもの名前)ちゃんは頭もいいし、美人だしいい子だねぇ」
と、孫を褒めるのが口癖になっていました。
母の不眠と通院
母は普段は平気そうに振る舞っていましたが、夜になると寂しさが増すのか、不眠に悩み始めました。
「なかなか寝付けない」と相談されたので、私は
「私が通っているクリニックに行ってみる? 眠剤を出してくれるかもしれないよ」
と提案しました。
次の私の通院日に合わせて、母をクリニックへ連れて行きました。
診察室では、私が母の普段の生活の様子と「夜、眠れなくて困っている」ことを説明しました。
医師は母に優しく話しかけながら
「とりあえず、寝つきを良くする薬を出してみますね。ただし、飲んだ後で起きるとふらつくことがあるので、夜中にトイレに行くときは十分注意してください」
と言い、ハルシオン を処方してくれました。
その日から母は薬を飲み始めましたが、「布団に入るとすぐに眠れる」ととても喜んでいました。
私自身も長年 ハルシオン を服用しており、寝つきが悪い時には サイレース を頓服で使っています。
ただし サイレース は翌日に残りやすいので、飲む時は ピルカッター で半分に割るようにしています。
母の場合は、ハルシオンだけで十分効果があり、一度寝つけば朝まで目が覚めることはありませんでした。
「寝ぼけや転倒の心配があるかも」と少し心配していましたが、それも杞憂に終わりました。
母の突然の変化
父が亡くなって数ヶ月が過ぎ、私は再びハローワークに通い、就職活動を始めました。
そんなある日、家族で夕食を食べていると、突然 母が玄関から入ってきました。
そして、
「お父さんが亡くなって、お母さんは一人ぼっちなのに……。お母さんなんてどうなってもいいんでしょ!」
と言い捨てて、自分の家へ帰ってしまいました。
突然の出来事に、私も妻も驚いて顔を見合わせました。
「今のはいったい何だったんだろう? いつもと様子が違ったよね……?」
と、不安を感じながらも、その日は話を蒸し返さずに静かに過ごしました。
翌日、妻と相談し、
「やっぱり寂しさが募っているんじゃないかな? 夕食は一緒に食べるようにしようか?」
ということになり、母の家で一緒に夕食をとることにしました。
食事のメニューも、母の好みに合わせて少し気を配るようにしました。
この生活を2週間ほど続けると、母から
「お母さんはもう大丈夫だから。ご飯も一人で食べられるから心配しないで」
と告げられました。
「じゃあ、また何かあったら言ってね」と伝え、それからはお互いの家で食事をとるようになりました。
その後も時々外食はしましたが、回数は徐々に減っていきました。
母の言動に違和感を覚える
父が亡くなって2度目のお彼岸を迎えました。
その日、母と二人で出かける用事があり、車の中で私は母に
「今日はお彼岸の中日だから、お墓参りに行こう」
と誘いました。
すると母は、
「お花を買うのも大変だし、今日はもう疲れたから、お墓参りは行かないでいいや」
と言いました。
私は、
「お花くらいは私が買うけど、歩くのが大変ならやめておこう。また今度行こう」
と提案し、その話は一旦終わりました。
ところが、夕方になって突然母が怒鳴り込んできました。
「今日はお彼岸の中日なのに、お墓参りにも行かないなんて! そんなだったら、お父さんの家から出て行ってくれ!」
母はすごい剣幕でまくしたてました。
私は驚きながらも、「うん、分かった。そういうことなら出て行くよ」と答えましたが、
昼間の会話と 真逆のことを言う母に違和感 を覚えました。
しばらくしてから母の家へ行き、
「今日の昼間、お墓参りに行こうって誘ったよね? でも、大変だから行かないって言ったのはお母さんだよ? どうして言うことが変わったの?」
と尋ねました。
「まぁ、出て行けというなら出ていくけど……」とも付け加えました。
すると、翌日になり、昼間に母が私の家にやってきて
「昨日はひどいことを言ってごめん。許してくれる?」
と泣きながら謝りました。
「別に気にしていないから大丈夫。でも、どうして急にあんなことを言ったの?」
と尋ねても、母は何も答えませんでした。
「何かおかしい……。もしかして、昼間のことを忘れてしまった?」
そう思い始めたのが、この頃でした。
母の変化と違和感を感じた瞬間
✅ 母の寂しさが言動に影響を与え始める
✅ 突発的な怒りや、言ったことを忘れる症状が出てくる
✅ 認知症の初期症状なのか? それとも寂しさからくる混乱なのか?
母の変化に気づき始めた私は、「もしかして認知症?」と疑いを持ち始めました。
しかし、この時点ではまだ、単なる寂しさやストレスの影響だと思っていました。
次第に、母の言動は少しずつ変わっていくことになります。
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