仕事を探す決意
妻が生活を支えるために働いている中、私は相変わらず動けない状態が続いていました。
それでも、医師の指示に従い、抗うつ薬を容量を守って服用し続けました。
すると、本当に少しずつですが気持ちが軽くなり始めました。
特にこれといったきっかけがあったわけではありません。
ですが、毎日疲れながらも明るく接してくれる妻と、変わらず懐いてくれる子どもの存在が、私の心の支えになったのだと思います。
そうして、県庁を退職してから約1年が経ちました。
少しずつ生活のリズムが整い、体が以前よりも軽く感じるようになってきました。
「もしかしたら、働くことができるかもしれない」
そう思い始めた私は、まず身なりを整えることから始めることにしました。
それまで散髪にも行かず、髪はボサボサのままでした。
「とりあえず、髪を切ろう」
以前通っていた馴染みの理髪店には行きたくなかったので、近所にできた低料金のチェーン店を選びました。
こうして、再就職に向けた最初の一歩を踏み出しました。
ハローワークへ——障害者枠の求人探し
次のステップは、ハローワークでの仕事探しでした。
妻は、結婚する前に会社を退職した際、失業手当をもらいながらハローワークで仕事を探していた経験がありました。
私は一度もハローワークを利用したことがなかったので、まずは妻に付き添ってもらい、システムや手続きについて教えてもらいました。
ハローワークには障害者用の窓口があり、一般の求人に加えて障害者向けの求人も扱っていました。
また、応募する際には、企業に自分が障害者であることを伝えるかどうか選ぶことができました。
私は長年の通院歴があり、精神障害者手帳を取得していたため、障害者向けの窓口を利用することができました。
私が訪れたハローワークでは、担当者が一人専任でついてくれたため、毎回同じ人に相談できるという安心感がありました。
求人を探してみると、なかなか自分に合いそうなものが見つかりませんでした。
それでも、「研修制度が整っている」と書かれているIT企業の求人を見つけ、興味を持ちました。
「とりあえず、ダメ元で応募してみよう」
そう思い、ハローワークの担当者を通じて連絡してもらいました。
すると、早速面接の機会をもらえることになりました。
怪しい会社と履歴書紛失事件
面接当日、指定されたオフィスビルに向かいました。
しかし、到着してみると、その会社はオフィスビルの一室を借りているだけの小規模な事務所でした。
「なんだか怪しいな……」
そう思いながらも、チャイムを鳴らし、部屋に通されました。
すると、最初に対応した社長らしき人物が、ほとんど会話もせずにすぐどこかへ行ってしまいました。
「どういうことだ?」と戸惑っていると、別の担当者が現れ、履歴書の提出を求められました。
その日はそれで終了し、帰宅しました。
数日後、その会社から再び連絡があり、再度訪問しました。
そこで、また履歴書の提出を求められました。
「この前、伺った際に担当者へ渡しましたが?」
そう伝えると、担当者は驚いた様子で、
「履歴書を渡しちゃったのか……」
と、困惑していました。
どうやらこの会社は求人票には書かれていなかったものの、実態は派遣会社だったようです。
しかも、先日対応したのは派遣先の担当者だったらしく、履歴書はすでに派遣先の手に渡っていたことが判明しました。
第派遣先の会社に直接スカウトされるも……
それから数日後、派遣先の会社から直接連絡がありました。
「会社間で話が進んだのか?」
そう思いながら指定された場所へ向かいました。
すると、先日会った人物が人事担当であることが分かり、
「あんな吹けば飛ぶような会社なんて気にしなくていい。うちで働かないか?」
と、まさかのスカウトを受けました。
「履歴書を見せたら社長も気に入ったようだ」
とのことでした。
確かに、面接中に突然いなくなるような社長がいる会社よりも、こちらの方が信用できるかもしれません。
そう思い、私はその申し出を受け入れることにしました。
その後、最初の会社に応募辞退の電話を入れました。
突然のトラブル——すべて白紙に戻る
数日後、就職を決めた会社から突然電話がかかってきました。
「○○(最初の会社名)が派遣人員を全員引き上げると言ってきた。いったい何をしたんだ?」
私はただ応募辞退の連絡をしただけだったので、驚きました。
私は冷静に、「御社にお世話になることになったので、応募を辞退させていただくとお伝えしただけです」と伝えました。
しかし、相手の担当者は明らかに困った様子でした。
どうやら、最初に「○○(最初の会社名)は吹けば飛ぶような会社だから気にしないでいい」と言っていたにもかかわらず、実際にトラブルが起きると、私に責任転嫁しようとしているようでした。
私はその態度に納得がいかず、毅然とした態度で言い返しました。
「ご自身で『○○は気にしないでいい』とおっしゃっていましたよね? 今さら内情がどうなろうと、私には関係ありません。それならば、この話はなかったことにしてください。」
そう伝えると、相手は言葉を失ったようでした。
私はその場で就職の話を断り、この件から手を引くことにしました。
その後、最初の会社からも連絡がありましたが、
「私は誘われたから応じただけです。それも、もう断りました」
と伝えました。
ようやく働こうという気持ちになった矢先、こんなトラブルに巻き込まれました。
再就職に向けて少しずつ前に進んでいたのに、出だしからこんなことが起きるとは思いませんでした。
せっかく振り絞った意欲が、一気に削がれてしまいました。
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